高専、知ってます?
第7話 体育祭だけ、髪を染めてはいけない
※この連載は事実7割・フィクション3割。
盛るのは私の体験談だけで、高専の制度やルールの話に嘘はありません。
前回まで、6話にわたって高専の話を書いてきました
入学初日に、同じクラスに留年生が4人いたこと
寮生が、見えるか見えないかの距離にいる先輩へ、
全力で挨拶を撃ち込んでいたこと
歓迎合宿で、学生会歌を大声で歌わされ、
挨拶の練習までさせられたこと
鉄のブロックを2時間かけて削ったこと
先生が、教えるプロではなく、その道のプロだったこと
ロボコンには入らず、ハンドボール部へ行ったこと
ここで一度、相関図を整理しておきます
中心にいるのは、機械科の私 片道2時間弱をかけて通学し、ハンドボール部に入った男です 左側にいるのが、同じクラスの年上の同級生たち ヤンさんは、最初の1ヶ月、私が避けていた人 ツテさんは、席が近くて、過去問や教官の攻略法を教えてくれる情報屋 ダンマリさんは、ほとんど喋らないのに、勉強はできる人 マボロシさんは、席はあるのに、初日以降ほとんど姿を見ない人です 右側には、上級生 歓迎合宿での私の一言に大爆笑し、 その後アイスを奢ってくれるようになった学生会長 そして、その叫びを真正面から浴び、 以後1年間、私に目をつけることになる学科長、もとい学科代表 下には、今後一緒にいることが増える友人たち 野球部の男の子と、バスケ部の女の子は、 同じクラスではありますが、まだ仲良しではありません 距離が、近づき始めたところ 相関図というものは、作ってみると面白いですね 「あ、この人とこの人は、まだそんなに喋っていないんだ」 「この人、関係性だけ見ると、かなり怖いな」 などと、書いている本人が改めて気づきます さて、ここからが本題
高専にも、体育祭と文化祭がある
高専というと、ロボコンとか、実験とか、レポートとか どうしても、そういうものを想像されがちです でも、高専にも体育祭や文化祭があります それもなかなかの規模で 私の行っていた高専では、 夏、だいたい5月頃に体育祭 秋、だいたい10月頃に高専祭(文化祭)をやっていました 年に二回、大きめの行事がある 勉強だけしているわけではないんです ……まあ、行事の準備で授業が楽になるかというと、 そんなことはありません 行事は行事で、別にちゃんと大変です 今回の話は、そのうち体育祭の話
体育祭は、学科対抗
私の高専の体育祭は、学科対抗で行われていました 機械科、電気科、化学科、情報系の学科等、 学科ごとにチームを組む 競技の得点を積み上げて、 最後に総合得点で勝敗を決める ここまでは、いたって普通の体育祭です ただし、高専の体育祭には、 もうひとつ重要なものがありました それが、応援団です 高専の応援団は、 単に競技の合間に声を出す人たちではありません その学科の結束力の象徴 応援団がどれだけまとまっているか どれだけ声が出ているか どれだけ迫力があるか 体育祭の総合得点とは別に、 応援合戦の点数がつくんです 私の通っていた時代は、 応援合戦の様子が Youtube 動画にアップもされており、 それなりの再生数もありました だからこそ、競技で勝っていても、 応援合戦で負けると、なんとなく負けた感じがする 逆に、競技でいまひとつでも、 応援で優勝すれば、かなり誇らしい 応援団の打ち上げもありました クラス単位の打ち上げではなく、 応援団は応援団で打ち上げに行く それくらい、応援団は独立した組織でした たしか、1年生は応援団に入れなかったはずです まだ入学したばかりで、 学科の伝統も、先輩との距離感も、何もわかっていない そんな状態で応援団に入れるほど、甘い世界ではなかった ……いや、応援団に入れないことを、 甘いと言っていいのかは分かりませんが
なぜか、髪を染めてはいけない
高専は、髪色が自由でした 少なくとも、私の高専では 金髪にしようが、赤髪にしようが、 普段の学校生活で何か言われることはありません 高専生は、見た目よりも、 レポートを出したかどうかのほうが、よほど重要 そういう世界です ところが、体育祭の話になると、 急にルールが増えます 「髪を染めている人がいると、応援団の点数を引く」 ……なぜ? しかも、その人が応援団員かどうかは関係ありません 学科のどこかに一人でもいれば、学科全体の減点です 競技の速さでもない 声の大きさでもない 応援の振り付けでもない 髪です 体育祭の応援とは、学科の結束力を見せるもの 髪色がバラバラだと結束していないように見える たぶん、そういう理屈だったのでしょう いや、分かりませんが 私たちが聞かされたのは、もっとシンプルな話でした 「髪を染めている人がいたら、応援団の点数が減る」 それだけ でも、減点されると言われると、 話は本人だけでは終わりません 自分が染めていなくても、 同じ学科の誰かを気にする 体育祭の日だけ、 自由な髪色が連帯責任に変わるんです
五学年分の声をそろえる
そして、学科が集まるということは 例の「儀式」が行われます
普段は教室も、授業も違う人たちが、 一つの学科として並ぶ そして、上級生から言われる 「声が小さい」 「もっと出せる」 「挨拶は相手に聞こえるように」 何度も繰り返す 学生会歌を歌う 歌うというより、叫ぶ あの、リズムを完全に無視した単語の投擲 「シィィッ! ジィィツ! ゴォォ! ケェェェン!!!」 そして、もし髪を染めている人がいたら その学年は、追加で声出し 「お前らの学年にいるんだから、お前らが責任を持て」 そういう話になる 髪を染めた本人だけが注意されるのではありません 同じ学年の全員が、もう一度声を出す 競技が始まる前から、学科の結束力を試されている というより、結束力という名前で、 全員まとめて押されている これが、同調圧力です 簡単に言えば、 みんなと同じようにしないと、みんなで困る仕組み しかも、誰か一人の髪色が原因で、全員が声を出す 髪を染めていない人まで 体育祭とは、運動能力を競うイベントのはずでした しかし私たちは、本番前から、 髪色と挨拶と声量を管理されていた スポーツ大会というより、学科単位の共同生活訓練です
体育祭は、競技が始まる前から始まっている
こうして私たちは、体育祭当日を迎える前に、 すでに何度も声を出しました 学生会歌を歌い、挨拶をし、声をそろえ、 髪色を確認する 金髪がいないか 赤髪がいないか 応援団の点数を減らす人がいないか 髪色を確認する体育祭って、なんなんでしょうね 高専は、普段は自由です でも、学科対抗の行事になると、 急に全員が一つの生き物になる その一体感を作るためなら、 声も出させる 挨拶もさせる 髪も黒くさせる 本人が望んでいるかどうかは、あまり関係ない 学科のために 応援団のために そして、点数のために こうして、高専の体育祭は、 競技が始まる前から始まっていたのでした
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 相関図を見ながら、 「この人、今後どうなるんだろう」 と思ってもらえたら嬉しいです 高専の体育祭や、妙な校則・慣習の思い出がある方は、 ぜひコメントで教えてください 次回も読みたいと思ってもらえたら、購読もぜひ






髪色を変えるのはそれなりのリスクがあるんですね。
娘に聞くと、体育祭の日はみんなのメイクが濃くなるって言ってました。
髪の色で減点になるとは😳
競技より発声練習があるなんて🤣